皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
気づけば、頬を熱い雫が伝っていた。

「……っ」

慌てて袖で拭おうとすると、公爵閣下が小さく笑った。

「あはは。本当にエリナは、泣き虫になったな。」

「ち、違います……!」

必死に涙を拭いながらも、心はどうしようもなく殿下を想ってあふれてくる。

「殿下を想うと……不思議と泣けてくるんです。」

その告白に、公爵閣下は目を細め、柔らかく問いかけてきた。

「おやおや。殿下だけではなく、エリナも殿下に夢中なのか。」

胸の奥がじんと熱くなる。私は自然と笑みを浮かべ、しっかりと答えた。

「はい。殿下しか想っていません。」

言葉にした瞬間、迷いは消えた。

私の心を捉えて離さないのは、まちがいなくセドリック殿下――ただ一人。

その想いが、涙となって溢れ出し、けれど今は誇らしくも思えた。
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