皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「殿下、お待たせいたしました。」

そっと扉を開け、湯気の立つカップを両手で差し出す。

セドは少し驚いたように私を見つめた。

やがて「ありがとう」と低く囁き、受け取ったカップを唇へ運ぶ。

「……温かい。」

一口、二口と飲むたびに、その表情が和らいでいく。

硬く結ばれていた眉がほどけ、目元には優しい色が宿った。

「甘いな。」

そう言いながらも、声はどこか安堵に満ちている。

「少しだけお砂糖を入れました。飲むと安心して眠れるんです。」

私がそう説明すると、セドはしばらく黙り込んだ後、ふっと微笑んだ。

「なるほどな。……本当に、不思議と心が落ち着く。」

その微笑みは久しく見ていなかった、少年の頃のあの笑顔だった。

胸がじんわりと熱くなり、涙が込み上げる。

「エリナのおかげだ。」

そう言って、セドは心から安堵したように私を見つめた。

その視線があまりに優しくて、私はただ俯きながらも、頬を赤らめるしかなかった。
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