皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「エリナ……」

セドの指先が私の頬を撫で、次いで肩口から腕へとゆっくり伝っていく。

その手つきは驚くほど優しく、私を壊さぬよう確かめるようだった。

「殿下……」

思わず名前を呼ぶと、唇を塞がれる。深く、熱を帯びた口づけに、心も体も抗えなくなっていく。

「怖いか?」

囁きが耳に触れ、私は小さく首を振った。

胸の奥に残っていた不安よりも、彼に触れていたいという想いが強かった。

セドは私の指を絡め取り、額をそっと合わせる。

「エリナ……俺を愛してくれ。」

真摯な声が胸に突き刺さる。私は息を呑み、そして静かに頷いた。

「……はい。」

次の瞬間、彼の手が私の腰を抱き寄せ、温もりに包まれる。

熱が広がり、羞恥も迷いも消えていく。

初恋の人に身も心も委ねる――その瞬間、私はただセドの愛にすべてを預けた。
< 67 / 151 >

この作品をシェア

pagetop