皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
夜の静寂に包まれた寝室で、二人の吐息だけが重なり合う。

絡み合う手、寄り添う体温。

幾度も名前を呼ばれ、唇を重ねられるたびに、私は自分がひとりの侍女ではなく「女」として望まれているのだと実感していった。

「……セド。」

震える声で名を呼ぶと、彼は熱に潤んだ瞳で私を見下ろした。

「エリナ……もう放さない。」

その言葉と共に、腰を強く抱き寄せられる。

「俺のモノだ。」

低く響く声が、心の奥深くに刻み込まれる。羞恥も不安も、すべて甘い熱に溶けていく。

「はい……殿下……」

気づけば、涙が零れていた。嬉しくて、切なくて、夢のようで。

彼の腕の中で、何度もその言葉を確かめるように抱きしめ合った。
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