皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
そして――セドと私の肌が重なった。

「……っ!」

甘い痛みが体を走り抜け、息が詰まる。

「大丈夫か、エリナ。」

耳元に落ちた低い声に、涙が溢れた。

「大丈夫です……。奪ってください、殿下。」

勇気を振り絞ってそう告げると、セドは私を見つめ、切なげに微笑んだ。

やがてゆっくりと体を揺らし始める。

熱と熱が溶け合い、吐息が重なっていく。

彼の優しさがひとつひとつの動きに滲み、痛みは次第に甘美な悦びへと変わっていった。

「エリナ……」

低く押し殺した殿下の声が胸の奥を震わせる。

その響きに包まれるだけで、心も体も蕩けそうだった。

気づけば私は彼にしがみつき、逃げ場のないほど強く抱きついていた。

初恋の人と、ようやくひとつになれた幸せに、涙は止まらなかった。
< 69 / 151 >

この作品をシェア

pagetop