皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
そんな時だった。ふと視線をセドに戻すと、隣にいるはずのクラリッサ姫の姿が見えなかった。

胸の奥がざわつき、私は慌てて声を掛けた。

「皇太子殿下、クラリッサ姫はどこに?」

セドは少し困ったように首を傾げる。

「ああ、化粧を直しに行くと言って、席を外してしまった。」

その答えに嫌な予感が走った。

王宮での婚約発表の夜会で、姫が一人で行方をくらますなど考えられない。

「探してまいります。」

私は軽く礼をして、すぐに大広間を出た。

煌めく宴の喧騒を背に、私は廊下を駆け抜ける。

控えの間、化粧室、回廊の影……どこにもクラリッサ姫の姿はない。

汗が額をつたう。行方不明など、あり得ない。

胸を締め付ける焦燥に突き動かされ、足早に中庭へと向かった。

月明かりに濡れた静かな庭園。

そこに、ようやくクラリッサ姫の姿を見つける。
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