皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
翌朝。
柔らかな朝日がカーテンの隙間から差し込み、シーツに光を落とした。

目を覚ますと、隣には穏やかな寝顔を見せるセドの姿がある。

昨夜の出来事が鮮やかに胸によみがえり、頬が熱を帯びた。

(夢じゃなかった……殿下と、ひとつになったんだ。)

けれど、その幸福感のすぐ裏側に、冷たい現実が押し寄せる。

私は――ただの侍女。

皇太子殿下の妻になる資格など、本来どこにもない。

「どうして……」

小さく呟き、胸元を握りしめる。

昨夜の誓いの言葉が嬉しかった反面、叶うはずのない未来を望んでしまったことに、罪悪感さえ覚えた。

もし誰かに知られたら、私は――。

そして殿下まで批判に晒されてしまうだろう。

幸せと不安がせめぎ合い、心臓は苦しいほど早鐘を打つ。

――それでも。
もう後戻りはできない。私の心も体も、昨夜で確かに殿下のものになってしまったのだから。
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