皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
朝日が差し込み、まだ温もりの残る寝台で、私はセドの胸に抱かれていた。

彼の規則正しい寝息を聞きながら、どうしても現実の不安が胸を締めつける。

その時だった。扉が控えめにノックされ、続いて足音が部屋に入ってきた。

「殿下、失礼しま――」

入ってきたのはアルキメデス。

視線が私たちに注がれ、彼は息を呑んだ。

「エリナ……断ったんじゃなかったのか。」

布団を慌てて胸元に引き寄せる私。

裸のままのセドは構わず、冷静な眼差しで友を見返した。

アルキメデスの顔には、抑えきれない痛みが浮かんでいた。

好きな女が、自分の目の前で殿下に抱かれた――その事実が、彼を深く傷つけているのだ。

沈黙を破ったのはセドだった。

「もう、エリナは俺のモノだ。」

その言葉は、まるで宣告のように響いた。

アルキメデスはしばらく立ち尽くした後、何も言わずにきびすを返し、部屋を後にした。

閉じられた扉を見つめながら、胸の奥に重いものが残った。

彼を傷つけてしまった――その痛みは、私の心を深く締め付けた。
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