皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
アルキメデスが去った扉を見つめたまま、私は胸を押さえていた。

(私のせいで……アルキメデスが……)

重苦しい思いが心を締めつけ、目に熱いものが滲む。

そんな私の肩を、後ろから大きな手が抱き寄せた。

「気にするな。」

低い声が耳元に落ちる。

「殿下……でも、私は……」

「俺がおまえを守る。」

短く、それでいて揺るぎのない言葉。熱い体温ごと包み込まれるようで、抵抗する力が抜けていく。

「アルキメデスの気持ちも、周りの声も……すべて俺が引き受ける。だからエリナは俺のことだけを見ていればいい。」

その瞳は真っ直ぐで、少しも迷いがなかった。

「殿下……」

涙が零れ落ちた瞬間、彼はそれさえも唇で拭うように優しく口づけてきた。

――私はこの人に守られたい。

たとえ世界を敵に回しても、きっと彼は私を放さない。

そう信じられるほどに、セドの抱擁は強く、温かかった。
< 75 / 151 >

この作品をシェア

pagetop