皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
そして私は、毎晩のようにセドに抱かれ、同じ寝台で眠る夜を過ごしていた。

「エリナ……君は俺の安らぎだ。」

そう言って、彼は必ず私を腕に閉じ込める。

広い胸に抱かれていると、心が解けていき、すべてを忘れてしまいそうになる。

そんなセドが、愛おしくて仕方がなかった。

けれど――忘れてはいけない。

彼はこの国の皇太子殿下であって、私だけの恋人ではないのだ。

誰よりも高い立場にある人であり、未来を担う存在。

私の想いは、ただの甘い夢に過ぎないのかもしれない。

「セド……あなたが好き。」

眠りに落ちた彼の横顔を見つめながら、声にならない気持ちが溢れる。

そっと身を寄せ、頬に小さなキスを落とす。

ほんの一瞬の行為。それでも私にとっては大切な証だった。

――たとえ許されぬ想いでも、今だけは夢を見ていたい。

静かな寝息に包まれながら、私は彼への想いを胸に秘め、そっと瞳を閉じた。
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