皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
だけど――そんな関係に、とうとう気づいた人がいた。

侍女頭のマリアだ。

「エリナ、最近……夜伽の番が多くなったわね。」

その声音は柔らかかったが、目は鋭く光っていた。

彼女は夜ごと、誰が殿下の部屋へ向かうのかを必ず確認しているのだ。

隠し通せるはずもなかった。

「そ、そうでしょうか。」

視線を逸らす私に、マリアはさらに言葉を重ねる。

「あなたが一番、分かっているはずだと思うけれど。」

静かな叱責に、胸が痛む。

「エリナ。」

低い声で名を呼ばれ、私は思わず背筋を伸ばした。

「殿下に結婚が迫っているのは、分かっているわね。」

「……はい。」

答える声は震えていた。

そう――皇太子殿下にいつまでも侍女を宛てがうわけにはいかない。

やがて彼には国の未来を担う伴侶が定められる。

それが避けられぬ現実だと、マリアは私に突きつけているのだ。
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