皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
ついに、その噂は公爵ルーファスの耳にも届いた。

私が殿下の夜伽に呼ばれている――そんな声が、侍女たちの間から広がっていたのだ。

「エリナ。」

執務室の帰り、人気のない廊下で呼び止められた。

振り向くと、厳格な眼差しをたたえた公爵閣下が立っていた。

「殿下の夜伽に呼ばれていると聞いた。」

低く、抑えた声。心臓が跳ね、言い逃れはできないと悟った。

「……はい。」

答えた瞬間、空気が張り詰める。

公爵は深くため息をつき、苦しげに私を見つめた。

「その……辛くはないか?」

私ははっとした。閣下は、殿下の気持ちに私が仕方なく応じていると考えているのだ。

必死に首を振る。

「いいえ。むしろ、嬉しいんです。」

言葉にすると、胸の奥の熱があふれそうになった。

「エリナ……」

公爵閣下は一歩近づき、私の肩に手を置いた。

その掌の重みは、父のようでもあり、試すようでもあった。

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