皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「結婚などしたくない……」

クラリッサ姫は泣き声を混じらせながら、必死にエドガーの胸にしがみついた。

「俺もだ。あなたを他の男に渡したくない。」

低く震える声でそう告げると、エドガーは衝動に駆られたように姫を抱き寄せ、その唇を奪った。

「愛している、クラリッサ姫……」

月明かりの下で交わされる禁断の口づけ。

信じがたい光景に、私はもう耐えられず、思わず二人の目の前に飛び出してしまった。

「きゃっ!」

クラリッサ姫が驚きに目を見開く。

エドガーも慌てて彼女を庇うように立ちふさがった。

「あなた方……今のは……」言葉が喉で詰まる。

婚約を結んだばかりの姫が、国の騎士団長と唇を重ねている――あまりに衝撃的な現実に、頭が真っ白になる。

次の瞬間、背後から重い足音が響いた。

振り返ると、そこにはセドリック皇太子の姿があった。

月光を浴びたその瞳に浮かんでいたのは、怒りではなく、深い絶望の色だった。
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