皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「両想いなら……余計に、殿下が溺れるのも仕方ないかもしれないな。」

その言葉に、胸が熱くなった。

認めてもらえた。私と殿下の想いが、ただの戯れではなく、確かな絆だと。

「でも……いずれは、放れなければならないことを、私は知っています。」

吐き出した声は、自分でも驚くほど震えていた。

そうだからこそ。

この想いが熱いうちに、せめて黙って見届けてほしい――それが私の唯一の願いだった。

公爵閣下は目を細め、しばし沈黙した後、静かに問う。

「エリナ……諦めるのか。殿下と一緒にいることを。」

その言葉は鋭く胸に突き刺さった。

喉の奥が熱くなり、唇を強く噛みしめる。

「私は……愚かな女ではありません。」

絞り出すように答える。

殿下を想う気持ちを抑えきれない愚かさと、立場をわきまえようとする理性。

矛盾する二つの想いの間で揺れる自分を、せめて誇りで覆い隠すしかなかった。

公爵閣下は私を見つめ、深く息を吐いた。

その眼差しには、私の決意を量るような厳しさと、娘を見るような温かさが入り混じっていた。
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