皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました

第7章 覚悟の証

そして翌日。

私は廊下でルーファス公爵閣下の姿を見かけた。

「公爵閣下……」

呼び止めようと一歩踏み出したところで、彼が側近と話している声が耳に入ってきた。

「皇太子殿下が、侍女に溺れているというのは本当だったのですか。」

側近の問いに、胸がぎゅっと締めつけられる。――まさか。

「ああ。しかも両想いだ。」

心臓が大きく跳ねた。

もしかして……私たちのこと? 足がすくみ、声を掛ける勇気が喉に詰まる。

「まさか、エリナがその相手だとは。」

はっきりと名前が出た瞬間、全身から血の気が引いた。

聞かれている。知られてしまった――。

「俺も驚いているところだ。」

公爵閣下の低い声が廊下に響く。

私は柱の陰に身を隠し、必死に鼓動を抑えようとした。

殿下との秘密が、こうして少しずつ周囲に漏れ始めている――その現実に、背筋が凍りついた。
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