「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「そうだ、晃太郎様。
 私、思いつきましたの」
と珠子が手を打つと、晃太郎は笑顔で訊いてくる。

「どうした?
 何処か途中で寄りたいところでもあるのか?」

「いえ。
 夜行列車で行くのですよね?」

「そうだな。
 十月からは寝台車もあるようなんだが。

 まだ今はないから、ちょっと大変かと思うんだが……」

「あの、夜行列車で行って、博覧会を見て、すぐに夜行列車で帰ってくれば、向こうで泊まらなくてすむのではないですか?」

 それなら、誰にも文句つけられません、と珠子は言ったが、

「……なんだ、その弾丸旅行は」
と言われてしまう。

「夕方に新橋を出て、神戸に着くのは昼だからな。
 それでまた夕方、すぐに夜行列車に乗るのなら、イルミネーションも見られないぞ」

「あ、そうですね」

 今回の博覧会は夜も開いていて、電気で会場が飾りつけてあり、とても美しいそうなのだ。

 珠子もそれを楽しみにしていた。
< 111 / 256 >

この作品をシェア

pagetop