「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
大阪の博覧会に行きました
 


 夕方の四時四十五分発の神戸行きの列車に乗るため、珠子たちは新橋停車場に来ていた。

 大正に入って東京駅ができるまで、ターミナル駅であった新橋停車場は人でごった返していた。

 ちょっと疲れそうな感じだが、旅のはじまりだと思うと、ワクワクしてくる。

 洋服の方が楽だし、身動きしやすいのだが、珠子は着物で来ていた。

「着物で行け、着物で。
 洋服より脱がせづらいから」
と古書店の前の道から行ってきた兄に従ったわけではない。

 作ってもらったまま、夜逃げ騒動で着れず、隠し持っていたお気に入りの紅い着物を着てきたかったからだ。

 ちなみに、洋服も鞄の中に入っている。

「はぐれるなよ、珠子」
「はい」

 ……なんか、新婚旅行みたいだな、と珠子は、ちょっと照れた。

「あ、ここにも自働電話ありますね」
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