「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「あの人、なんか人を乗せるのが上手いからっ。
 商売相手も、いつも、ふうっと乗せられちゃうんだよっ」

「大丈夫だ」
と高平が頷いた。

「珠子も人を乗せるのが上手いから」

「狐と狸の化かし合いみたいになってそうですな」
と後ろに控えていた黒崎がちょっとだけ笑って言う。

「それにしても、今から門司港に行っても間に合わないですよねえ」
と黒崎は言った。

 飛行機にひょいと乗れないこの時代。

 もう出航してしまった船を追いかけて、追い抜くのは難しい。

 第一、みんな仕事もある。

「岩崎」
と高平が肩を叩いた。

「行ってこい。
 仕事は俺に任せろ。

 お前の上司には言っておいてやるっ」

「……高平」
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