「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「さ、珠子さん」
と次郎が珠子の手を取り、エスコートしてくれていた。
港には、東京でもまだ珍しい自動車が止まっていた。
車から細身の洋装の紳士がステッキを手に降りてくる。
「お父様っ」
とその姿に珠子は驚く。
「珠子っ、綺麗になって」
と珠子によく似た父が両手を広げ、出迎えてくれた。
「……三条様?」
没落して夜逃げしたのでは?
と次郎が目を見開く。
「いやー、何度かお前に電話したんだが、出なかったから」
「あの電話、お父様だったのですか?」
「ちょうど仕事で九州に来ていたときに、お前にまた電話してみたら、出なかったんだが。
岩崎晃太郎くんという人が、電話交換手を通じてかけ直してきてくれてね」
晃太郎は、今とったが、電話が切れたので、もう一度つないで欲しいと交換手に頼んだのだ。
すぐかけたので、なんとかなったらしい。