「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「お父様、珠子さんはすごいですよ。
船で異国のご婦人方と会話しているうちに、英語もみるみるうちに話せるようになって」
街の洋食店で次郎は珠子の父にそんな話を語り出した。
「いえあの、英語は女学校時代に少しかじってましたし。
藤崎教授が考え事しているときは、いきなり英語で話しかけてくることがあるので」
異国の本も多く取り扱ってますし、と言ったあとで、珠子は思い出した。
「そういえば、次郎さんは藤崎教授とお友だちなんでしたっけ?」
「いいえ」
と完璧なテーブルマナーで食事をしていた次郎は笑顔で答える。
「……藤崎教授のご紹介で来られたっておっしゃってませんでしたっけ?」
「藤崎教授は知っています。
その藤崎教授があなたの店から出てくるのを見ました。
藤崎教授が通っているのなら、貴重な蔵書のある、いい古書店なんだろうなと推測しただけです」