「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「藤崎教授が、ここの本が粒ぞろいだと言っているっておっしゃってませんでしたか?」

「藤崎教授にあなたの店の話をしたら、そう言うでしょうねと思いまして」

 あれは未来予知です、と次郎は笑う。

「俺は時を駆けられるんですよ。
 想像によって。

 あとで、藤崎教授に出会って、実際にそう言ってもらう予定だったんですけどね。

 そしたら、時間が前後するだけで嘘じゃないですから。

 でも、たまたま忙しくて、教授に会えなかったんですよねえ」

 そう悪びれもせずに言う。

「あの教授の知り合いだと思ったら、警戒心が解けるでしょ?」

 こういうところは、ちょっと池田と似ていると思った。

 さすがは従兄弟同士だ。

 家庭環境が似ているのかもしれないと思う。

「うん、君はなかなか面白い」

 父は次郎に手を差し出し、テーブル越しに握手をしている。

「お父様っ」

 その人、娘を嵌めた人なんですけどっ、と珠子は思っていたが。

 元より、そんな細かいこと気にする人ではなかった。
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