「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 



 両親がよく夕食を食べに来るという料理屋のカウンターで、久しぶりに家族水入らずで食事をした。

 ……いや、兄はいなかったんだが。

 母と再会を喜び合っていると、ガラガラと店の戸が開く。

 息を切らせた晃太郎が立っていた。

「おお、岩崎くん。
 ここはすぐわかったかね」

 大変だったろう、と父は晃太郎をねぎらう。

「まあ一杯やりなさい。
 冷たいビールがいいかな?
 冷酒にするかね」

 そう機嫌良く晃太郎に話しかけていた。

 珠子は自分が迎えに行くから、君は今すぐ電車に飛び乗れ、と父は晃太郎に言ったらしい。

「職場の方には私から話を通しておくから。

 ……今なら、顔がきくから。
 来週にはわからないが」

 ……なんて不安定な。

 ほんとうに、明日、またすべてを失ってても驚かないなと珠子は苦笑いする。
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