「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「私たちはここで大将と話しながら呑むから。
 二人はそっちで」

「どうぞ」
と窓際の席を用意してくれていたらしい大将が微笑む。

 その席からは門司港の光がよく見えた。

 船や港の灯りがつるんとした黒い海に映っている。

「綺麗ですね」

 そちらを見ながら目を細めた珠子に晃太郎が言う。

「……一人で長く列車に乗っている間。
 お前のことばかり思い出していた」

 ……それは単に、暇だったからでは?

 あと、この間、私と列車に乗ったばかりだからでは?
とちょっと思ってしまったが、晃太郎は照れているので、そういうわけでもないようだ。

 なので、その顔を見た珠子も照れて俯く。

 店内は雰囲気良く、ちょっと暗いので。

 店の外にあるガス灯の光が晃太郎の顔を照らし出していた。

 鼻筋の通った顔に陰影が濃くついて、その顔が整っていることがよくわかる。
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