「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 珠子が笑い、
「船で愛の逃避行とか、確かにロマンティックですね」
と言うと、晃太郎が、

「じゃあ、するか、逃避行」
と言う。

 いや、なにから逃げるつもりですか……。

「……池田様とか?」

「次郎さんとか」

「借金とりとか」

「それは嫌だな……。
 簀巻(すま)きにされて、海に捨てられそうだ」
と晃太郎が今そこにある暗くねっとりとした海を見ながら言う。

 笑ってしまった。

 二人でなにから逃亡する考えながら、夜の港でいつまでも語っていた。





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