「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「次郎さんはいつも調子に乗りすぎだが。
 あの行動力は見習いたいと常々思っていたんだ――。

 今、俺も調子に乗っていいだろうか?」

「えっ?」

「調子に乗った俺は嫌いか?」

「……いえ、別に」
と言うか、あなたの調子に乗ったところが想像つかないんですが、と思う珠子の手を強く握り、晃太郎はもう一度、口づけてきた。

 とても真摯な態度で――。

 これがこの人の調子に乗ってる状態なのかと思うとおかしくもあるし。

 なんだか安心する。

「池田とはちゃんと話をつける。
 俺と結婚してくれ」

「……はい」

 晃太郎は、ホッとしたように珠子の額におのれの額をぶつけた。

 船の汽笛を聴きながら、晃太郎が言う。

「次郎さんは男前だし。
 船で逃亡するなんてロマンティックだし。

 お前が次郎さんと恋に落ちたらどうしようかと思っていた」
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