「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 池田も次郎もあれから更に事業を拡大し。
 今では忙しくてなかなか会えないほどだ。

「そうだ、珠子。
 面白い物を見せてやろう」

 晃太郎が古い手紙のようなものを懐から出してきた。

「ついに外務省に届いたんだよ」

 あっ、それは……と珠子は苦笑いする。

 次郎に攫われたとき、船の中で出した手紙だった。

『晃太郎様、春日丸にいます。
 助けてください』
と書いてある。

「……いや、これでは間に合わないだろう」
と冷静に晃太郎は言う。

「でも、あのとき、晃太郎様の名前しか浮かばなかったんです」

 誰かに助けて欲しいと思ったとき、晃太郎の顔しか浮かばなかった。

「その辺の船員に助けを求めたほうがよかったのでは……」

「それだと次郎さんの立場が悪くなってしまいます」

「……そんなときに、そんな心配しなくていいのでは?」
と晃太郎は言う。

「次郎さん、まだお前のこと諦めてないからな」
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