「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

珠子と晃太郎が結婚する前の悪あがき

 

「君たちが結婚する前に、言いたいことがある」
 そう池田が言い出した。

「珠子さん」
と池田は珠子の手を握る。

 晃太郎が咎めようとしたが、
「まあまあ、結婚前に言いたいことは言わせてやれ。
 その方がスッキリするから。
 お前、奥に入ってろ」
と道から高平が言ってくる。

 池田と晃太郎は店内に、高平と次郎は道にいた。

「珠子さん、囲われ者としてのあなたはこれで終わりです。
 結婚してくださいっ」

「あ、ありがとうございます……。
 すみません」
と珠子は苦笑いして言った。

 すっと池田が避けると、まるで申し合わせていたように、その真後ろに次郎がいた。

 いや、道にいるのは変わりないのだが。

 従兄で幼なじみであるがゆえの阿吽の呼吸だろうか。
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