「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「珠子さん、強引に連れ去ってすみませんでした」

「もう何度も謝っていただきましたわ」

「じゃあ、もう一度連れ去ってもいいですか?」

「は?」

 次郎は珠子の腕をつかむと、ぐいと引き、自分の方に引き寄せる。

「女性は強引な男が好きと聞きましたっ。
 もう一度、連れ去ったら、俺に惚れ直すかもしれないじゃないですかっ」

「え、いや、ちょっと……」

 池田がその側で溜息をついて言う。

「最初に連れ去ったとき、なにもしなかったからですよ。
 次郎さんはいつも、半端に強引なんだから」

 ……連れ去ったのが、池田様だったら、どんな恐ろしいことがっ!?

 珠子と高平は抱き合い、震え上がる。

 ――ここにはケダモノしかいないっ!
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