「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 珠子の目が窓の外を見てるのに気づいたようだ。

 外を歩いていたのは郵便配達員だった。

 彼らはピストルを持っているっ。

 警察官がピストルを持つのは、大正に入ってずいぶん経ってからだったが、郵便配達員は、大事な郵便物を守るために、早くからピストルを所持していた。

 キュウリ瓶より、確実っ、と焦った山内はガッと善子の腕をとる。

 使用人とはいえ、整った顔をした山内に、強引に腕をつかまれ、善子は赤くなったように見えた。

「嫌だわ、山内。
 なんなのっ」

「いいから、行きましょうっ。
 お父様に怒られますよっ」

 やだ、もう~っ、と言いながらも、そんなに嫌そうでもなく、引きずられて出て行った。

 珠子がそちらを見送っていると、さすが、今の騒ぎなど気づかないような素振りでボーイが料理を持ってきた。

 善子の頼んだオムライスもある。

 ほかほかで、つるんとした黄色いオムライスは実に美味しそうだった。

 晃太郎を見る。

「……食べていいぞ」
 珠子の目を見た晃太郎はそう言った。

 


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