「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「勉学はできるけど、裁縫はいまいち。
 きっぷがいいので、女学生たちの憧れだった珠子様は、なんで池田様のご子息の囲われ者なんてやってるの」

「……まあ、いろいろありまして」
という一言で、珠子はおのれの人生をまとめた。

「それにしても、晃太郎様を見損ないましたわ」

「え? 何故です?」

「池田様から、あなたを妾として借り受けているそうですわね。
 山内が池田様のところで働いている者から聞いてきましたの。

 そんな女性を物みたいに」

「ま、まあ、二人で一緒に出かけるくらいのことしかしていませんし。
 あとは本を買いに来られたり――。

 岩崎様は……」
と言いかけ、晃太郎と呼べと言われたんだったなと思ったが。

 今、晃太郎はここにいないし。

 善子は晃太郎の婚約者になるかもしれない人だ。

 名前で呼ばない方がいいだろうと思い、珠子はそのまま続けた。

「女性に免疫がないので、少し女性と一緒に時間を過ごしてみようと思われただけですよ」

 そう晃太郎をかばってみたが、善子は、
「でも、なんだか嫌ですわ」
と言う。

「珠子様、私と一緒に何処か海外に行きません?」
「は?」
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