「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 


 ある日、晃太郎は仕事の関係で行っていた、江戸から続くという大きな料理屋の廊下で池田と出会った。

「池田じゃないか」
と言いながら、ちょっとビクついてしまう。

 思わぬところで、友人と出会ったことを喜びながらも、そろそろ珠子を返せと言われないだろうかと不安に思ったのだ。

「どうだい?
 首尾の方は」

 育ちが良く、いつも愛想のいい友人は、周囲に誰もいないのを確認したあと、そう訊いてきた。

「古書店の娘から、いろいろと教わったかい?」

 ……珠子から教わることと言えば、探している本が、店の何処にあるのか、くらいだが、と晃太郎が思っていると、

「あの娘への給金を自分が払うと言っていたし。
 ずいぶん、気に入っているんだろう?」
と池田は笑う。

「だが、いいよ。
 じいに訊いたんだが、珠子という娘には、他より多い金額を払ってるらしいから」

 僕が払うよ、結婚祝いだ、と池田は言う。

「結婚祝い?」
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