「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「本は出かけたことのない国のこともわかる、知識の宝庫だぞ!」

 珠子と似たようなこと言ってるな、と晃太郎は思った。

 軽薄そうに見ても、所詮、珠子の兄だった。

 まあ、晃太郎も高平も、そのことは知らないのだが――。

「お前だったら、なにに使う?」

 ふいにそう問われ、晃太郎は悩んだ。

 ――俺だったら?

「今なら……

 そうだな。
 彼女になにか美味しいものを食べさせてやったり。

 洋服や着物を買ってやったり。

 何処かに連れて行ってやったり――」

 珠子を楽しませることしか浮かばなかった。

「じゃあ、ちょうどいいじゃないか」
と高平が言う。

「今、大阪で博覧会やってるだろ?
 連れてってやれよ」

 この年、最後にして最大となる内国勧業博覧会が大阪で開催されていた。
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