「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
今日、馴染みの大学教授が売りに来たばかりの本を真剣に読んでいた珠子は、突然、電話のベルが鳴る音を聞いた。
えっ? と立ち上がる。
奥の部屋にある大きな二つのベルがついた壁掛けの電話に向かう。
――誰?
お父様? お母様?
……他に番号を知っている人は――
ああ、池田様と執事の方。
でも……お兄様もご存知だったかも。
瞬時にいろいろと考えながら、
「……も、もしもし」
と出てみた。
電話が開通した当初は、みんな『おいおい』と呼びかけていたのだが。
それでは女性はちょっと、というので、『申す申す』から『もしもし』になったようだった。