「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 


 早朝、珠子が掃き掃除をしようと、ガラガラと店のガラス戸を開けたら、そこに晃太郎が立っていた。

 ひっ、といきなり目の前にあった顔に珠子は息を呑む。

「博覧会に行きたいか」
と晃太郎は唐突に言ってきた。

「え? ああ、そうですね」
と状況が読めないながらも、珠子が言ったとき、

「いいなあ、博覧会」
と晃太郎の後ろから声がした。

 ――いや、誰だっ?
という顔で、晃太郎が振り返る。

 小太郎が牛乳瓶を手に立っていた。

「いいねえ、博覧会」

 今度は反対側から声がして、また、

 ――だから、誰っ?
と晃太郎が、反対側を振り返る。

 新聞配達の祥吉(しょうきち)が立っていた。

「いいですねえ、博覧会。
 私も行きたいと思ってたところなんですよ~」

 スーツ姿の若い男まで現れて、晃太郎は、

 何故、この町は、早朝、次々人がやってくるんだっ、
という顔をしていた。
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