望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから
09 撃退
「……アヴェルラーク伯爵令嬢。貴女は出会ってすぐのハビエルお兄様と結婚されるらしいけれど、一体どういうことなのかしら。実際あの時、ハビエルお兄様は、貴女の名前も知らなかったようだけど!?」
ザッと砂埃をあげて威嚇するように、一歩踏み込んだマチルダ様。私は本能的な危機を感じて動けないから、引くに引けない。
ヒッ……ヒイイイィィィィ……蛇に睨まれた蛙って、こんな気持ちなんだ!! もう少しで、食べられる感じです……? 捕食されてします? 美味しくないから、どうか勘弁してくださいぃぃぃいい……!
正直に言ってしまうと、すぐにでもくるりと振り返って全速力で走り出したい。けれど、王族の質問を答えぬなど、臣下として決して許されぬこと。ここで失礼をしてしまえば、不利益を被るのは私の家名になるのだ。
それだけは避けなければと私は必死な思いで、声を絞り出した。
「私が夜会でお声がけしたところ、クラレット卿は……」
「まあ! ハビエルお兄様に、貴女がお声がけですって!? まったく……身の程知らずも良いところね。言っておくけど、ただすぐそこに居ただけで、ハビエルお兄様は、貴女のことを好きでもなんでもないのよ……! 浮かれて良い気にならないことね!」
事の次第を話そうとしたんだけど、ピシャリと遮られて私は泣きたくなった。
あ……これはもう……駄目な感じだ。
ザッと砂埃をあげて威嚇するように、一歩踏み込んだマチルダ様。私は本能的な危機を感じて動けないから、引くに引けない。
ヒッ……ヒイイイィィィィ……蛇に睨まれた蛙って、こんな気持ちなんだ!! もう少しで、食べられる感じです……? 捕食されてします? 美味しくないから、どうか勘弁してくださいぃぃぃいい……!
正直に言ってしまうと、すぐにでもくるりと振り返って全速力で走り出したい。けれど、王族の質問を答えぬなど、臣下として決して許されぬこと。ここで失礼をしてしまえば、不利益を被るのは私の家名になるのだ。
それだけは避けなければと私は必死な思いで、声を絞り出した。
「私が夜会でお声がけしたところ、クラレット卿は……」
「まあ! ハビエルお兄様に、貴女がお声がけですって!? まったく……身の程知らずも良いところね。言っておくけど、ただすぐそこに居ただけで、ハビエルお兄様は、貴女のことを好きでもなんでもないのよ……! 浮かれて良い気にならないことね!」
事の次第を話そうとしたんだけど、ピシャリと遮られて私は泣きたくなった。
あ……これはもう……駄目な感じだ。