望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから
 恋の好敵手(ライバル)となった女が……あまり見るところなく大したことのない容姿で、非常に申し訳ありません~!!!

 心の中で叫びながら、涙目になってしまった。

 ……そうだった。城へとやって来たら、身分を確認されて城門を通過した私の情報も、この人に筒抜けになるんだった!

「アヴェルラーク伯爵令嬢だったかしら?」

「はっ……はい。マチルダ姫様。ごきげんよう……」

 私は慌てて王族への敬意を表す|深い礼(カーテシー)をした。私は王族へと忠誠を誓う臣下の娘なので、彼女には最大限の敬意を払う必要がある。

「……ハビエルお兄様に会いに来たの?」

「そうです」

「ふうん?」

 鋭い青い目を眇められて、私は自分からは決して動けぬ石像になったような気がしていた。


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