望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから
 大好きな彼に断られて傷つくことが怖いし、おそらくはマチルダ様は無理強いではなく、ハビエル様から告白してくれて愛してくれることが一番の理想なのだろう。

 もし、ハビエル様が『すべてわかった上で』マチルダ様の恋心を、知らない振りをしていたとする。

 マチルダ様との縁談は本人からの希望で王族から無理強いされることはないから、匂わされても気が付かぬ振り素知らぬ振りをして、誰か結婚出来る相手を探す。

 何度も何度も邪魔をされたとしても、お互いに絶対に結婚するとすると決意出来た女の子なら、マチルダ様はもう邪魔をすることが出来ない。

 だって、彼女は……彼に自分から、好きだと言うことが出来ないからだ。

 ハッと気が付けば、灯りの点いた馬車にまで辿り付いていた。

「シャーロット。ここまで、疲れただろう? 大きめの馬車で来た。邸に着くまで、横になっても大丈夫だ」

 おそらくは長距離用の馬車の中は、ゆったりとしていて座面もかなり広い。

 後から乗り込んだハビエル様は微笑んで、私の頭を撫でた……やだ。たったそれだけの仕草だけでも、胸がきゅんとして心臓が高鳴り始めた。

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