ずっと隣にいてくれませんか。
視界に村上先輩が入ってきた瞬間、全身の体温が上がるのを感じ、自然と右手が前髪を整えだす。

もう話すことはできないと思ってたのに、こんな偶然ってあるんだな…。

緊張を落ち着かせるため小さくため息を吐いてから、意を決し先輩の元へ歩みを進める。

「あの~、もしかして探し物ですか…?」

私の声に彼はパッと顔を上げる。

「…ん?そうなんだよ、鍵落としちまったみたいで」

そう言いながら先輩は苦笑いをする。

やっぱり、と私は思いながら手の中に入れていたモノを先輩へと差し出す。

「たぶん、落とした鍵ってこれじゃないですか?」

その瞬間先輩はぱあっと顔を輝かせ

「ああっ!!それだよそれ!ありがとな、見つけてくれて!」

至近距離で見る先輩の嬉しそうな顔に思わず胸の高鳴りを感じてしまう。

「あ、そういえば君俺がリレー走ってるとき応援してくれたよね?」


鍵を受け取りながら何気なく先輩は話す。

「え、聞、聞こえてたんですか!?」

「ああ、すげえ大きい声出てたし。ちゃんと届いてたよ」

ニカっと笑うその笑顔とその言葉で私の心は溢れかえった。

「ありがとうございます…。」

「いや、お礼言いたいのはこっちだし。嬉しかったよ。…じゃ、また!」

ひらひらと手を振りながら先輩は昇降口へ向かっていく。


その後ろ姿をしばらく見つめながらさっきまでの余韻に浸る。

『嬉しかったよ。』

「…ふふっ」

思い出すだけで心がぽっと照らされる。

その日、私はいつもよりも数段軽い足取りで家路へと着いた。
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