忌み子の私に白馬の王子様は現れませんでしたが、代わりに無法者は攫いにきました。
「ふぅ」

 人疲れした私は大広間と繋がっているバルコニーに出ていた。
 嫌いな人達じゃないけれど大勢の人と関わることは疲れる。

「もう喰わねーのか」
 ヴィシャスもやってきた。

「また戻るわ…少し休憩」
「ふぅん」

 並んでバルコニーから大広間の騒ぎを見守る。

「いいチームだろ?母ちゃんが結成してオレが継いだんだ」
「…えぇいい人たち。前から思ってたけど貴方ラビィルさんのこと大好きね」
 彼女に頭が上がらない様子からして。からかってみたくなった。

「ああ大好きさ!母ちゃんだけじゃなくて家族は皆好きなんだ」
 てっきり誤魔化すかと思ったのに真っすぐな回答が返ってきた。羨ましい、私にもいつか誰かをこんなにも堂々と好きだと口に出せる日が来るだろうか?…来ないと思う。

「ヴェルゼは自分の母ちゃん好きじゃなかったのか?」
 魔痕持ちで忌み嫌われて育った私に聞く質問じゃないだろ、と思う。思うけど、母親だけは私を助けてはくれなかったけれど庇ってくれはした。

「…………そうね、嫌いじゃなかったかもしれないわ」
 それだけ言っておく。

「国とか亜人差別とかよくわかんねーけど…母ちゃんが創ったこの傭兵団をオレは守りたいって思ってる」
「うん」
「団員は家族だ。血が繋がってなくてもな、今はあんたもだ」

「私は…」
「結婚する気はねーってんだろ?」
 言葉を続ける前にヴィシャスが先に言う。

「うん…申し訳ないけれど…」
 他人と深く付き合うことは怖い。

「それとは違う話だ、例えアンタがオレの妻じゃなくても団員なら家族だ」

「…………」
「だから、例え、オレを振ったとしてもオレはアンタを守るし助けるよ。孤児だったオレを家族にしてくれた皆と同じように。それだけ言っときたかった」

 ヴィシャスは照れ臭そうに頭をガシガシと搔いていた。

「…………ありがとう」
「あとコレ。ん!」
 ヴィシャスがどこかに私から見えないよう隠していた箱を差し出して来た。

「なに?」
「ん!」
 開けろという意味か。包装を破くと中からはウサギのぬいぐるみがでてきた。

「これって」
 まじまじとぬいぐるみを手に取って眺める。

「帝都でじっと見てたろ?欲しいのかと思って、一旦別れた時に買っておいた…違ったか?」

 ヴィシャスが自分のプレゼントを喜んでいるか不安そうに尋ねてくる。

「……とっても……嬉しいわ」
 私はぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる。気のせいか、サプライズを演出した彼は少しだけカッコよく見えた。

「可愛い…」
「あぁ、大事にしてくれよな」
 その日は寝るまでウサギさんのぬいぐるみと私は過ごすのだった。



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