忌み子の私に白馬の王子様は現れませんでしたが、代わりに無法者は攫いにきました。
11話 鉱山内部
鉱山の入り口は、荒涼とした大地にぽっかりと開いた黒い穴のように見えた。私とヴィシャスはブグラーの配下である騎士の一人に連れられ、そこへ入る。
内部は魔鉱石が使われらランプが点灯していたため歩く分には問題はなかった。淡い光が壁面を照らし、湿った空気に混じる土の匂いが鼻を突く。足元には意外なほど整っていたが、それだけではなかった。地面に鉄の線路が敷かれている。トロッコが走るためのものだ。時折、遠くからガタガタという音が響いて鉱山が稼働していることを教えてくれる。
線路は緩やかに下り坂になり、私たちは自然と奥へと進んだ。やがて、ピックが岩を叩く音、トロッコの車輪が軋む音が聞こえてくる。
そして、明かりが強まる方へ進むと目の前に拓けた地下空間が広がった。人口的に広げたような場所だったが天井は高く、幾重もの段差があり各箇所に更に奥へと続く穴が空いている。線路は複数に分かれ、穴の先へ繋がっている様子が見える。地下空間に停車したトロッコのいくつかには、魔鉱石が満載され、青い光を放っていた。空間の中央には労働者が居住区域と思しき粗末なテントや小屋が並んでいる。
ヴィシャスが周囲に視線を送り私にだけ聞こえるよう低く呟く。
「ロクな場所じゃねぇな。奴隷扱いしてやがる」
地下空間にいる鉱山労働者達の服はボロボロだった。
年齢は様々で、若い者から老人まで。肌は土と汗で黒く汚れ、目は虚ろだ。鎖で足を繋がれた者もいる。ピックやシャベルを手に岩壁を掘っている者、トロッコに鉱石を積む者、休憩中にうずくまる者。空気には、彼らの重い息遣いが満ちていた。時折、咳き込む音が響き、肺を痛めているのがわかる。角や獣耳を生やした亜人が大半であったが、中には人間種もいた。
人間の中でもボロを纏った者が労働者で鎧や小綺麗な制服を纏った者が監督官だろう。監督官は手に鞭を持って場を偉そうに睥睨していた。
「…………」
鉱山労働者の中には汚らしい包帯に血を滲ませながらピックを振っている者までいる。痛ましい光景に胸が痛む。
監督官がブグラーの騎士団の紋章が入ったバッジを胸に付け、傲慢な態度で歩き回る。一人が、作業の遅い労働者に鞭を振るい、鋭い音が空間に響いた。
「怠けるんじゃねえ! 今日のノルマが未達だぞ!」
労働者は痛みに顔を歪めながら、慌ててピックを振り上げる。別の監督官は、トロッコを押すグループに怒鳴っている。
「もっと速く! 魔鉱石が足りねえんだよ! ブグラー様の命令だぞ!」
「!」
ヨレヨレの老人に鞭が放たれ私は演技も忘れ思わず悲鳴を上げそうになる。
「おいおい、ガキにやり過ぎじゃねぇの」
間にヴィシャスが入っていた。彼の背中で鋭い音が鳴る。
「っ貴様!我らに盾づくか!!」
突如現れた人物に監督が怯みながらも睨みつける。ヴィシャスも負けじと睨み返していた。労働者たちの視線がチラチラとこちらに向くがすぐに目を逸らす。恐怖と諦めが混じった表情だ。
「うっ」
監督官が後ずさる。
「な、なんだその目つきは」
自分が気圧されたことに気付き、プライドを傷つけられ顔が真っ赤になっている。
いけない……このままでは荒事必須だ。
「あ~ら、ごめん遊ばせ……私の亜人奴隷はどうも血気盛んで!ほら!生意気な目をしないの!」
「うおっ」
間に入りヴィシャスの背中をバシバシと叩く。こっそりと治癒の魔法で鞭に打たれた身体を治してあげる。
「ふんっ、しっかりと躾をしておけ!」
「ふふん!わ、わかってるわ~!お~っほっほっほ」
何とか面目を保った監督官が立ち去りほっと息をつける。
「初日からトラブルを起こしれくれるなよ」
それまで黙っていた私達を案内する騎士が面倒そうに注意してきた。
「わかっているわ!それで?私達はここで働くのかしら?」
「……あぁそうだ。男の奴隷は魔鉱石を掘れ。人間のお前は治療で壊れた亜人を治せ。ケガを治せそうにない者がいれば報告しろ。使い物にならないなら廃棄処分する」
騎士がここでの労働の説明を始める。
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内部は魔鉱石が使われらランプが点灯していたため歩く分には問題はなかった。淡い光が壁面を照らし、湿った空気に混じる土の匂いが鼻を突く。足元には意外なほど整っていたが、それだけではなかった。地面に鉄の線路が敷かれている。トロッコが走るためのものだ。時折、遠くからガタガタという音が響いて鉱山が稼働していることを教えてくれる。
線路は緩やかに下り坂になり、私たちは自然と奥へと進んだ。やがて、ピックが岩を叩く音、トロッコの車輪が軋む音が聞こえてくる。
そして、明かりが強まる方へ進むと目の前に拓けた地下空間が広がった。人口的に広げたような場所だったが天井は高く、幾重もの段差があり各箇所に更に奥へと続く穴が空いている。線路は複数に分かれ、穴の先へ繋がっている様子が見える。地下空間に停車したトロッコのいくつかには、魔鉱石が満載され、青い光を放っていた。空間の中央には労働者が居住区域と思しき粗末なテントや小屋が並んでいる。
ヴィシャスが周囲に視線を送り私にだけ聞こえるよう低く呟く。
「ロクな場所じゃねぇな。奴隷扱いしてやがる」
地下空間にいる鉱山労働者達の服はボロボロだった。
年齢は様々で、若い者から老人まで。肌は土と汗で黒く汚れ、目は虚ろだ。鎖で足を繋がれた者もいる。ピックやシャベルを手に岩壁を掘っている者、トロッコに鉱石を積む者、休憩中にうずくまる者。空気には、彼らの重い息遣いが満ちていた。時折、咳き込む音が響き、肺を痛めているのがわかる。角や獣耳を生やした亜人が大半であったが、中には人間種もいた。
人間の中でもボロを纏った者が労働者で鎧や小綺麗な制服を纏った者が監督官だろう。監督官は手に鞭を持って場を偉そうに睥睨していた。
「…………」
鉱山労働者の中には汚らしい包帯に血を滲ませながらピックを振っている者までいる。痛ましい光景に胸が痛む。
監督官がブグラーの騎士団の紋章が入ったバッジを胸に付け、傲慢な態度で歩き回る。一人が、作業の遅い労働者に鞭を振るい、鋭い音が空間に響いた。
「怠けるんじゃねえ! 今日のノルマが未達だぞ!」
労働者は痛みに顔を歪めながら、慌ててピックを振り上げる。別の監督官は、トロッコを押すグループに怒鳴っている。
「もっと速く! 魔鉱石が足りねえんだよ! ブグラー様の命令だぞ!」
「!」
ヨレヨレの老人に鞭が放たれ私は演技も忘れ思わず悲鳴を上げそうになる。
「おいおい、ガキにやり過ぎじゃねぇの」
間にヴィシャスが入っていた。彼の背中で鋭い音が鳴る。
「っ貴様!我らに盾づくか!!」
突如現れた人物に監督が怯みながらも睨みつける。ヴィシャスも負けじと睨み返していた。労働者たちの視線がチラチラとこちらに向くがすぐに目を逸らす。恐怖と諦めが混じった表情だ。
「うっ」
監督官が後ずさる。
「な、なんだその目つきは」
自分が気圧されたことに気付き、プライドを傷つけられ顔が真っ赤になっている。
いけない……このままでは荒事必須だ。
「あ~ら、ごめん遊ばせ……私の亜人奴隷はどうも血気盛んで!ほら!生意気な目をしないの!」
「うおっ」
間に入りヴィシャスの背中をバシバシと叩く。こっそりと治癒の魔法で鞭に打たれた身体を治してあげる。
「ふんっ、しっかりと躾をしておけ!」
「ふふん!わ、わかってるわ~!お~っほっほっほ」
何とか面目を保った監督官が立ち去りほっと息をつける。
「初日からトラブルを起こしれくれるなよ」
それまで黙っていた私達を案内する騎士が面倒そうに注意してきた。
「わかっているわ!それで?私達はここで働くのかしら?」
「……あぁそうだ。男の奴隷は魔鉱石を掘れ。人間のお前は治療で壊れた亜人を治せ。ケガを治せそうにない者がいれば報告しろ。使い物にならないなら廃棄処分する」
騎士がここでの労働の説明を始める。
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