忌み子の私に白馬の王子様は現れませんでしたが、代わりに無法者は攫いにきました。
31話 決着
「と、父様」
妹のティアラが怯え父に縋り付く。
「ぐ…ぐ…ぬ……うぅ」
しかし、彼にはもう対抗する手段はない。聖騎士に勝った竜人に対抗できる戦力などないのだ。
「ヴィシャス……」
ラビィルさんに安全を確保してもらいながら私も貴賓席にいる家族の元へ向かう。刀を突きつけられ父と妹は怯え地に膝をついていた。……哀れだった。尊大だった父も私とよく似ているのに全く違う妹も小さく見える。
「ね、姉さま」
妹は震えながら慈悲を乞うていた。私は願うようにヴィシャス、愛する男に目を向ける。
「わーってるよ。どんなんでもヴェルゼの血縁だ。殺しまではしねぇよ」
その言葉に安堵した自分に驚く。どうやら、彼等に対する情がまだあったらしい。
「ったくアンタは相変わらず人が好いぜ。まあその分?オレが悪辣にバランスとればいっか。それでつり合いがとれるってもんよ」
ほっとする私に何が可笑しいのかカカッと笑っていた。
視線を戻すと注意が逸れたことでティアラと父が逃げようとしている。
「おっと、お義父さん。まだ用件は終わってねぇ。娘の嫁入り道具に欲しいもんがあるんだ」
刀で突いて動きを止める。
「誰が義父だと……なんだ、何が欲しい、金か?許しか?」
「ここ」
ヴィシャスは指で地面を指している。
「は?」
領主は何を言われているか分からない表情をしている。私にもわからなかった。
「だからぁ、ここ。アンタの統治しているこの領都をオレ達にくれ。今日からオレが治めるからアンタらは出てってくんない?」
「なっ!!ばっ、そんなこと」
チャキ…、突いていた太刀の先が少し喰い込み領主の首からわずかに血がにじむ。
「うぐぅ!?わ、わかった。わかったから、殺さないでくれ。私の負けだ……」
「父様!?そんな……」
「殺されるよりマシだろうティアラぁ!!」
「さて、話はまとまったようじゃな」
これまで黙っていたラビィルさんが杖をコンと鳴らした。
「宣言を」
「おう!」
ヴィシャスが声を張り上げる。
「領主は降伏した!この戦いオレ達の完全勝利!!!そんで……この土地もオレ達のもんになった。つーことで」
更に声のトーンを上げる。
「亜人同盟改め、亜人も人間も対等な赤竜王国の樹立をここに宣言する!!!」
おおおおぉぉぉぉぉ、とこの戦いに参加していた者達の歓声が上がる。というか……え?国????突然の話に私は頭がパニック状態だ。急展開の連続で脳のキャパシティを遥かにオーバーしている。
「カハッ!ハハハハハッ!!」
私はヴィシャスに肩を抱かれ壇上に立ったままオロオロとしていることしかできないのだった。
「じゃ~~な~~お義父さーん。娘さんは幸せにするんで安心してください」
ヴィシャスが城門から出ていく者達に笑顔で手を振っている。私はそこまでする気になれなかったので黙って見送っていた。果たして土地を失い権力も失った父と妹はこれからどうなるのだろうか?若干の心配はあるけれどそれ以上に自分自身がこれからどうなるかで私は頭がいっぱいだった。
「はぁ……」
「おいおい何だよ~、オレと結婚して嬉しくないのか~?」
「それは……嬉しいけど」
国をつくるって、本当にヴィシャスが王になるってこと?じゃあ私は王妃?え?何をすればいいの……不安が尽きない。
「あっ、そうか。結婚式を開かないとな!もちろん、指輪も用意するから心配すんなよ!とびっきりのもんをプレゼントするから心配するなよ」
今更、そんなことで頭を悩ましていない。どう考えても他にやることは山積みな気がする……。
「へへっ」
ヴィシャスが無邪気にはにかんでいる。絶対に難しいことは何も考えてない。
「…………」
…………………………まぁいいか。今日くらい…………。私も何も考えず今ある幸せを噛みしめよう。
何時の間にかどちらからともなく自然と2人で指を絡め、手を繋いでいた。
「これからもよろしく!愛してるぜヴェルゼ」
「うん、私も。愛してるヴィシャス………これからもずっと私を愛して。私もずっと貴方を支えるから」
距離が近づき、唇が触れ合う。
最初に宣言した通り、私はこうして処刑台の上で幸せを掴んだ。
物語であれば2人は幸せなキスをました、で終わるが現実はそうもいかない。
これから先、帝国内で勝手に国家を樹立したことで帝国の現政府と戦争が始まったり、亜人同盟に加わらなかった組織が王の座に名乗りを上げて魔痕の私を奪おうとしたり、妹が領都を奪い返しに来たり、子育てのことでヴィシャスと国を2分しかけるような喧嘩をしたりとイベントが目白押しだったりする。
でもまぁこの時点の私には与り知らない話で。未来のことを心配しても仕方ない。
なので当初の予定通り、この言葉で締めくくろうと思う。
2人は末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
妹のティアラが怯え父に縋り付く。
「ぐ…ぐ…ぬ……うぅ」
しかし、彼にはもう対抗する手段はない。聖騎士に勝った竜人に対抗できる戦力などないのだ。
「ヴィシャス……」
ラビィルさんに安全を確保してもらいながら私も貴賓席にいる家族の元へ向かう。刀を突きつけられ父と妹は怯え地に膝をついていた。……哀れだった。尊大だった父も私とよく似ているのに全く違う妹も小さく見える。
「ね、姉さま」
妹は震えながら慈悲を乞うていた。私は願うようにヴィシャス、愛する男に目を向ける。
「わーってるよ。どんなんでもヴェルゼの血縁だ。殺しまではしねぇよ」
その言葉に安堵した自分に驚く。どうやら、彼等に対する情がまだあったらしい。
「ったくアンタは相変わらず人が好いぜ。まあその分?オレが悪辣にバランスとればいっか。それでつり合いがとれるってもんよ」
ほっとする私に何が可笑しいのかカカッと笑っていた。
視線を戻すと注意が逸れたことでティアラと父が逃げようとしている。
「おっと、お義父さん。まだ用件は終わってねぇ。娘の嫁入り道具に欲しいもんがあるんだ」
刀で突いて動きを止める。
「誰が義父だと……なんだ、何が欲しい、金か?許しか?」
「ここ」
ヴィシャスは指で地面を指している。
「は?」
領主は何を言われているか分からない表情をしている。私にもわからなかった。
「だからぁ、ここ。アンタの統治しているこの領都をオレ達にくれ。今日からオレが治めるからアンタらは出てってくんない?」
「なっ!!ばっ、そんなこと」
チャキ…、突いていた太刀の先が少し喰い込み領主の首からわずかに血がにじむ。
「うぐぅ!?わ、わかった。わかったから、殺さないでくれ。私の負けだ……」
「父様!?そんな……」
「殺されるよりマシだろうティアラぁ!!」
「さて、話はまとまったようじゃな」
これまで黙っていたラビィルさんが杖をコンと鳴らした。
「宣言を」
「おう!」
ヴィシャスが声を張り上げる。
「領主は降伏した!この戦いオレ達の完全勝利!!!そんで……この土地もオレ達のもんになった。つーことで」
更に声のトーンを上げる。
「亜人同盟改め、亜人も人間も対等な赤竜王国の樹立をここに宣言する!!!」
おおおおぉぉぉぉぉ、とこの戦いに参加していた者達の歓声が上がる。というか……え?国????突然の話に私は頭がパニック状態だ。急展開の連続で脳のキャパシティを遥かにオーバーしている。
「カハッ!ハハハハハッ!!」
私はヴィシャスに肩を抱かれ壇上に立ったままオロオロとしていることしかできないのだった。
「じゃ~~な~~お義父さーん。娘さんは幸せにするんで安心してください」
ヴィシャスが城門から出ていく者達に笑顔で手を振っている。私はそこまでする気になれなかったので黙って見送っていた。果たして土地を失い権力も失った父と妹はこれからどうなるのだろうか?若干の心配はあるけれどそれ以上に自分自身がこれからどうなるかで私は頭がいっぱいだった。
「はぁ……」
「おいおい何だよ~、オレと結婚して嬉しくないのか~?」
「それは……嬉しいけど」
国をつくるって、本当にヴィシャスが王になるってこと?じゃあ私は王妃?え?何をすればいいの……不安が尽きない。
「あっ、そうか。結婚式を開かないとな!もちろん、指輪も用意するから心配すんなよ!とびっきりのもんをプレゼントするから心配するなよ」
今更、そんなことで頭を悩ましていない。どう考えても他にやることは山積みな気がする……。
「へへっ」
ヴィシャスが無邪気にはにかんでいる。絶対に難しいことは何も考えてない。
「…………」
…………………………まぁいいか。今日くらい…………。私も何も考えず今ある幸せを噛みしめよう。
何時の間にかどちらからともなく自然と2人で指を絡め、手を繋いでいた。
「これからもよろしく!愛してるぜヴェルゼ」
「うん、私も。愛してるヴィシャス………これからもずっと私を愛して。私もずっと貴方を支えるから」
距離が近づき、唇が触れ合う。
最初に宣言した通り、私はこうして処刑台の上で幸せを掴んだ。
物語であれば2人は幸せなキスをました、で終わるが現実はそうもいかない。
これから先、帝国内で勝手に国家を樹立したことで帝国の現政府と戦争が始まったり、亜人同盟に加わらなかった組織が王の座に名乗りを上げて魔痕の私を奪おうとしたり、妹が領都を奪い返しに来たり、子育てのことでヴィシャスと国を2分しかけるような喧嘩をしたりとイベントが目白押しだったりする。
でもまぁこの時点の私には与り知らない話で。未来のことを心配しても仕方ない。
なので当初の予定通り、この言葉で締めくくろうと思う。
2人は末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。