囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される
「何があったんだ?なぜ帰りたくないなどと。あそこでの暮らしが不自由だったか?」
耳元でカートレット様の低い声がする。
顔は見えないけれど、今は怒っていないみたい。
「そんなことありません。不自由なんかじゃ。カートレット様には本当に感謝しています」
「だったらなぜそのようなことを。そしてどうして崖から落ちた。ブローチに願った時、キミは助けを俺に求めた。状況からして、自害したようには感じられなかったんだが。何をしていたんだ」
帰ったら私たちが山へ入った理由なんてすぐにわかってしまうわよね。
「カートレット様に熱があると聞いたんです。治癒力を使えば治せますが、皆さんの前で使うわけにはいかないと思って。薬も切れているので、薬草を摘みに行こうと誘われました」
そうだ、今なら治癒力を使える。
「俺がいつ熱を出したと言うんだ?それにこの周辺に薬草があるなんて話は聞いたことがない。俺の敷地には騎士団の稽古場があるんだ。薬なんて切らすはずはない」
「えっ」
じゃあ、最初からすべてエリスに嘘をつかれていたというの?
エリスは突発的にあんな行動を取ったんじゃなくて、私を最初から崖から落とそうとするために?
「エリス……に誘われたな?」
確信に迫られ、ドクンと鼓動が大きくなった。
「そして突き飛ばされた。違うか?」
返事ができなかった。どうしてわかるんだろう。
「転送魔法でここへ来た時、エリスの姿が一瞬見えたんだ。彼女はキミを助けようともせず、俺の姿を見て身を隠した。普通であれば、キミの名前を呼んだり、救護しようとするだろう。まさかとは思ったが……」
「私がいけないんです。メイドの分際でお世話になっているのに、カートレット様に触れようとしたり、立場をわきまえず行動をしようとしてしまったから」
私がいけないの。私さえいなければ。
今の彼女はイライラすることもなく、普通の生活を送っていただろうに。
「俺が許しているんだ。アイリス、キミは俺にとって特別なんだ。俺がもっと皆に理解させるべきだったな」
特別、私が治癒力を持っているからよね。
「治癒力だけではない。正直、俺はキミに惹かれている」
まるで私の心の声が聞こえているかのようにそう伝えてくれた。
「えっ?」
ドクンドクン、彼の言葉が胸に響き、また鼓動が早くなる。
「はじめて会った時から、どうしようもなくキミのことが気になるんだ。決して誓うが、治癒力を持っているからという理由ではない。一人の女性として……だ」
彼は嘘をつく人ではない。私のことを特別、惹かれている。
嬉しいと感じてしまう私も、彼に惹かれているからだろう。
「信じてくれるか?」
ふと首を上に向け、恐る恐る彼の顔を見た。目が合う。
「はい」
私の顔はたぶん紅潮しているだろう。
彼の首元を見ると、血が滲んでいた。
「カートレット様、ケガを!」
「ああ。たぶん川に飛び込んだ時に岩にでもぶつかったんだろう。大したことはない」
「私が治します!」
彼に向き合う姿勢になり、首元に手を添え、意識を集中させる。
光が溢れ、彼の傷はなくなった。
耳元でカートレット様の低い声がする。
顔は見えないけれど、今は怒っていないみたい。
「そんなことありません。不自由なんかじゃ。カートレット様には本当に感謝しています」
「だったらなぜそのようなことを。そしてどうして崖から落ちた。ブローチに願った時、キミは助けを俺に求めた。状況からして、自害したようには感じられなかったんだが。何をしていたんだ」
帰ったら私たちが山へ入った理由なんてすぐにわかってしまうわよね。
「カートレット様に熱があると聞いたんです。治癒力を使えば治せますが、皆さんの前で使うわけにはいかないと思って。薬も切れているので、薬草を摘みに行こうと誘われました」
そうだ、今なら治癒力を使える。
「俺がいつ熱を出したと言うんだ?それにこの周辺に薬草があるなんて話は聞いたことがない。俺の敷地には騎士団の稽古場があるんだ。薬なんて切らすはずはない」
「えっ」
じゃあ、最初からすべてエリスに嘘をつかれていたというの?
エリスは突発的にあんな行動を取ったんじゃなくて、私を最初から崖から落とそうとするために?
「エリス……に誘われたな?」
確信に迫られ、ドクンと鼓動が大きくなった。
「そして突き飛ばされた。違うか?」
返事ができなかった。どうしてわかるんだろう。
「転送魔法でここへ来た時、エリスの姿が一瞬見えたんだ。彼女はキミを助けようともせず、俺の姿を見て身を隠した。普通であれば、キミの名前を呼んだり、救護しようとするだろう。まさかとは思ったが……」
「私がいけないんです。メイドの分際でお世話になっているのに、カートレット様に触れようとしたり、立場をわきまえず行動をしようとしてしまったから」
私がいけないの。私さえいなければ。
今の彼女はイライラすることもなく、普通の生活を送っていただろうに。
「俺が許しているんだ。アイリス、キミは俺にとって特別なんだ。俺がもっと皆に理解させるべきだったな」
特別、私が治癒力を持っているからよね。
「治癒力だけではない。正直、俺はキミに惹かれている」
まるで私の心の声が聞こえているかのようにそう伝えてくれた。
「えっ?」
ドクンドクン、彼の言葉が胸に響き、また鼓動が早くなる。
「はじめて会った時から、どうしようもなくキミのことが気になるんだ。決して誓うが、治癒力を持っているからという理由ではない。一人の女性として……だ」
彼は嘘をつく人ではない。私のことを特別、惹かれている。
嬉しいと感じてしまう私も、彼に惹かれているからだろう。
「信じてくれるか?」
ふと首を上に向け、恐る恐る彼の顔を見た。目が合う。
「はい」
私の顔はたぶん紅潮しているだろう。
彼の首元を見ると、血が滲んでいた。
「カートレット様、ケガを!」
「ああ。たぶん川に飛び込んだ時に岩にでもぶつかったんだろう。大したことはない」
「私が治します!」
彼に向き合う姿勢になり、首元に手を添え、意識を集中させる。
光が溢れ、彼の傷はなくなった。