愛憎路
第二話 神隠し
目が覚める。何だか狐につままれた様な気分で気持ち悪い。
どうやら土の上で眠っていたようだ。空は暁では無く、洞窟の様で岩盤に覆われていた。上体を起こし周囲を見ると、丁度私の左側の岩壁に小さな地蔵がぽつんと置かれていた。右側の壁には地蔵は置かれていない。
でも、それにしてもなんで私はここにいるんだ? 光で目の前が白くなって・・・
というか、こんな所で座ってる場合じゃない。こんな奇妙な事より大事な事があるんだ、今日と決めたからには今日行かないと、もう機会を自分で作ろうとはしないかもしれない。
幸いにも、今いる洞窟の様な場所からはすぐ出られた。すると、赤錆びた鎖で道が舗装された竹林に出た。下方にはさっきいた神社の拝殿の裏側が見える。ここは、神社の裏手の山の中か。
時計を確認する。時刻は17時手前。時間はたいして経っていない。
ここにいるのは緊張しすぎて記憶が飛んでいただけかもしれない。さあ、もう一回行こう。手紙を持って竹林を走り降り、元いた神社前の遊歩道に帰ってきた。
○○○
すると、再び目が覚めた。またさっきの洞窟で寝転がっていた。
違和感が体中をざわめいている。左壁に置かれた地蔵は何故か2つに増えていた。
流石に、これは何かおかしい気がする。
ふと横を見ると、さっき会った霧矢さんがいた。
「酔ってたか、俺?」
そう言いながら、彼は頭をかいている。
「あの」
この状況もあって、私は声をかけてみた。
「あれ、ああ。奇遇ですね? あ、というか俺急がないと!じゃあ、行ってきます!」
彼は急に慌てて洞窟の外へ出ていってしまった。彼のいた右側の壁にある地蔵は増えていなかった。
私も行かないと。
でもこの出口の無い迷路のような感覚は異常だ。
然し、何か起こさないと解決しないだろう。恋愛と同じだ、そうやって先延ばしにし続けたから、私は。
突如、ガコッとレバーを引いた音が響き渡る。その音と共に、霧矢さんがさっきいた場所に無から生えた。それと同時に右壁付近の地面から、地蔵が一体、植物が開花するかのように隆起する。
「あれ?」
と訝しみながら彼が体を起こす。
「あれ、またまた奇遇ですね」
「それは、もういいです」
ここまできたらもう奇遇でも何でもない。
「君も戻ってきた?」
「はい、早く行かないと・・・」
然し、時計を見ると時刻は変わらず17時前だった。
「いや、時間が進んでません」
「早く抜け出したい事には変わりない。次は走って突っ切ります」
そうして彼は私を置いて全速力で走っていき、再び戻ってきていた。
「はあ、お兄さんちょっと休憩する。疲れた・・・」
そう素に戻ったかの物言いと共に岩壁にもたれる。
だが、いよいよどうすればいいんだろう。暫くの間が洞窟を支配した。
「さっきのあなたの手紙、俺中身読んだんですよ」
すると間を破壊する、とんでもない言葉が響いてきた。
「でも、何で手紙なんですか?直接言った方が伝わるんじゃないかと」
「私、自分をあんまり出せないからいつもそれを文字に書いて消化してるんです」
「ストレス発散手段みたいな物ですか」
「はい、でもこういう時は辛いです」
「いや、そういう純粋な恋は素晴らしい。俺も制服また着たいなぁ・・・」
私は無意識に手紙を強く握りしめていた。
多分私は、手紙を渡してその時告白、なんて事は上手く出来ないだろう。
でも逆に、大人の方なら何かいい方法を知っているかもしれない。
「霧矢さんはどうしてるんですか?」
「俺はやっぱり愛情表現、直接ガッツリとだね。今日は嫁とのヨリを戻しにきたんですよ」
うわぁ、そういうタイプか。あんまり好きな感じじゃないな。でも、いつかはそうしないと想いは伝わらないのかもしれない。
「じゃあ、私いい加減行ってきますので」
「そう、幸運祈ってますよ」
今度こそこの幻みたいな物が打ち破れればいいのだけれど。
どうやら土の上で眠っていたようだ。空は暁では無く、洞窟の様で岩盤に覆われていた。上体を起こし周囲を見ると、丁度私の左側の岩壁に小さな地蔵がぽつんと置かれていた。右側の壁には地蔵は置かれていない。
でも、それにしてもなんで私はここにいるんだ? 光で目の前が白くなって・・・
というか、こんな所で座ってる場合じゃない。こんな奇妙な事より大事な事があるんだ、今日と決めたからには今日行かないと、もう機会を自分で作ろうとはしないかもしれない。
幸いにも、今いる洞窟の様な場所からはすぐ出られた。すると、赤錆びた鎖で道が舗装された竹林に出た。下方にはさっきいた神社の拝殿の裏側が見える。ここは、神社の裏手の山の中か。
時計を確認する。時刻は17時手前。時間はたいして経っていない。
ここにいるのは緊張しすぎて記憶が飛んでいただけかもしれない。さあ、もう一回行こう。手紙を持って竹林を走り降り、元いた神社前の遊歩道に帰ってきた。
○○○
すると、再び目が覚めた。またさっきの洞窟で寝転がっていた。
違和感が体中をざわめいている。左壁に置かれた地蔵は何故か2つに増えていた。
流石に、これは何かおかしい気がする。
ふと横を見ると、さっき会った霧矢さんがいた。
「酔ってたか、俺?」
そう言いながら、彼は頭をかいている。
「あの」
この状況もあって、私は声をかけてみた。
「あれ、ああ。奇遇ですね? あ、というか俺急がないと!じゃあ、行ってきます!」
彼は急に慌てて洞窟の外へ出ていってしまった。彼のいた右側の壁にある地蔵は増えていなかった。
私も行かないと。
でもこの出口の無い迷路のような感覚は異常だ。
然し、何か起こさないと解決しないだろう。恋愛と同じだ、そうやって先延ばしにし続けたから、私は。
突如、ガコッとレバーを引いた音が響き渡る。その音と共に、霧矢さんがさっきいた場所に無から生えた。それと同時に右壁付近の地面から、地蔵が一体、植物が開花するかのように隆起する。
「あれ?」
と訝しみながら彼が体を起こす。
「あれ、またまた奇遇ですね」
「それは、もういいです」
ここまできたらもう奇遇でも何でもない。
「君も戻ってきた?」
「はい、早く行かないと・・・」
然し、時計を見ると時刻は変わらず17時前だった。
「いや、時間が進んでません」
「早く抜け出したい事には変わりない。次は走って突っ切ります」
そうして彼は私を置いて全速力で走っていき、再び戻ってきていた。
「はあ、お兄さんちょっと休憩する。疲れた・・・」
そう素に戻ったかの物言いと共に岩壁にもたれる。
だが、いよいよどうすればいいんだろう。暫くの間が洞窟を支配した。
「さっきのあなたの手紙、俺中身読んだんですよ」
すると間を破壊する、とんでもない言葉が響いてきた。
「でも、何で手紙なんですか?直接言った方が伝わるんじゃないかと」
「私、自分をあんまり出せないからいつもそれを文字に書いて消化してるんです」
「ストレス発散手段みたいな物ですか」
「はい、でもこういう時は辛いです」
「いや、そういう純粋な恋は素晴らしい。俺も制服また着たいなぁ・・・」
私は無意識に手紙を強く握りしめていた。
多分私は、手紙を渡してその時告白、なんて事は上手く出来ないだろう。
でも逆に、大人の方なら何かいい方法を知っているかもしれない。
「霧矢さんはどうしてるんですか?」
「俺はやっぱり愛情表現、直接ガッツリとだね。今日は嫁とのヨリを戻しにきたんですよ」
うわぁ、そういうタイプか。あんまり好きな感じじゃないな。でも、いつかはそうしないと想いは伝わらないのかもしれない。
「じゃあ、私いい加減行ってきますので」
「そう、幸運祈ってますよ」
今度こそこの幻みたいな物が打ち破れればいいのだけれど。