第二作★血文字の囁き★
第二作★血文字の囁き★
 第二作:血文字の囁き

 プロローグ ― 声のはじまり

 梅雨の夜。大学生・ 藤崎沙耶 はレポートの資料を探しているうちに、ある新聞記事の切り抜きを手に取った。

 見出しにはこうある。
 「廃屋に残された血文字、二十年前の失踪事件」

 記者・相沢が執筆したその記事は、村ぐるみの隠蔽を告発する内容で、神谷家一家の不可解な失踪事件を世に問い直していた。

 記事を読み終えた瞬間、沙耶は耳の奥でかすかな声を聞いた。
 それは、湿った風のように低く、幼子のようにか細かった。

 「……ゆるして……」

 背筋が凍りついた。
 誰もいないはずの部屋。だが確かに聞こえた。

 翌朝、沙耶の姿は忽然と消えた。
 机の上には血でにじんだ紙片が一枚残されていた。

 そこには震える文字で、こう書かれていた。
 「ごめんなさい」


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 登場人物

 ◆主要人物

 相沢 亮介(あいざわ りょうすけ)
 中堅新聞記者。前作の主人公。神谷家事件を追い続けたことで血文字に囚われつつある。
 「囁き」を耳にし始め、自分も狂気に引き込まれていく。

 藤崎 沙耶(ふじさき さや)
 大学生。相沢の記事を偶然読んだことから“囁き”に取り憑かれる。
 物語冒頭で失踪し、事件の新たな発火点となる。

 藤崎 修一(ふじさき しゅういち)
 沙耶の兄。妹の失踪を追う中で相沢と接触する。
 調査に協力するが、自らも「囁き」を体験し始める。


 ◆周辺人物

 篠田 麻衣(しのだ まい)
 沙耶の友人。失踪の直前、沙耶から「声が聞こえる」と打ち明けられていた。
 事件の証言者として重要な役割を担う。

 黒田 誠一(くろだ せいいち)
 県警の刑事。相沢の記事に不信感を抱きつつも、藤崎失踪事件で否応なく再び神谷家の過去と向き合うことになる。

 神谷 綾(かみや あや)
 二十年前の神谷家失踪事件の長女。
 彼女が残した言葉こそが「血文字」と「囁き」の正体に関わっていると示唆される。
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