クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「どうぞまた、お越しくださいませ」
最後のお客様をお見送りするスタッフの声が聞こえる。私は閉店間際の売場内をひと回りしていた。
ドキドキするのは、これから売場を作り上げるという高揚感からだろうか。それとも――。
私は先ほど受信した、智田SVからのメールを思い返す。
【東北道が事故で渋滞している。一時間ほど、到着が遅れそうだ】
【こちらはこちらでできることを確実にやっておきます。どうぞ安全運転でお願いします】
そう返信をしたが、指先は震えていた。
荷物が届かなかったらどうしよう、というだけでない。智田SVは朝から仙台まで車を運転し、戻ってきてくれるのだ。往復約十二時間の道のり。疲れないわけがない。そのうえでの事故渋滞だ。智田SVに、なにかあったらどうしよう。
だが、怯んでいるわけにはいかない。智田SVがいない今、売場改変の全体指揮は私がとるしかない。
他店から集まってくれたスタッフ、残ってくれたスタッフを一度レジの前に集める。
「今日は当店の売場改変のためにお集まりいただき、ありがとうございます。今回の改変は大変大掛かりなものです。指示に従い、安全に注意し声をかけあっての作業をお願いいたします」
皆の前で挨拶をし、頭を下げる。自分を鼓舞するように一度大きく深呼吸をして、私は売場の指示を始めた。