クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 スタッフたちからは次々と質問が飛んでくる。それを、売場を走り回って対応する。

「店頭通路は全部の什器で広めにとってあるの。隣の什器と同じ位置に配置して」
「こっちのひな壇、先に奥のインナーエリアに動かしてもらってもいい?」
「先にポスターの張替えしてもらえる? 向こうでも梯子使いたいんだ」

 できることから、着実に。冷静に、丁寧に。どうすれば効率が良いかを考え、スタッフたちに指示を出す。
 閉店から三十分。たくさんのスタッフたちのおかげで、売場が徐々に変わってゆく。

 だが、店頭在庫の心配が頭の中から消えなかった。ちらりと見た店頭はもうすっかりベビー・キッズ売場に変わっている。だが、トドラー用の伸縮パンツを展開する予定の籠には、まだ商品が五分の一も入っていない。

(智田SV、どうか間に合いますように。無事でありますように)

 そう願いながら、どんどん出来上がっていく売場を回り続ける。
 その時だった。

「不動店長、由亜、荷受けお願いしまーす!」

 大きな声とともに、店頭へと駆け抜けてくる大量の段ボールの乗った台車が一台見えた。

「結木くん⁉」

 段ボールを運んできたのは、この店舗への配送担当、結木くんだった。彼はいつもの仕事着ではなく私服姿だが、いつもと変わらぬ爽やかな笑顔で売場に段ボールを降ろしてゆく。

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