クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「おはよう、今日もよろしく」

 私は慌てて〝店長〟に戻り、スタッフたちに声をかける。それから、やれ仕事だとパソコンに向き合った。

 昨日の売上金額が目標額に届いている。そのことに安堵しつつ、今日の人員配置を最終チェック。
 オープンまでの各スタッフの動きを把握し、脳内で開店時間までに売場ができあがる様子をシミュレーションする。

 理想通りにいかいないのは仕事も同じだ。すっかりルーティン化した朝の作業をしながら、本部でバリバリ活躍する自分をつい想像してしまう。
 だけど、すぐに小さくかぶりを振った。

(今はこれでいいじゃない。私を店長だと、慕ってくれる皆がいる。それに――)

 私は手元のバインダーに忍ばせた、売場改変案にそっと触れた。

 真霜のようなかわいさを持ち合わせていない私には、恋は果てしなく遠い。だから、せめて仕事だけでも理想に近づきたい。

(いつか、私の発案でたくさんのお客様が素敵な買い物体験をしてくれるように。これは、そのための第一歩)

 本部で働くという夢は、近いうちに叶うかもしれない。
 だけど、今は店長業務が優先だ。本部の指示通りに売場を完成させ、店舗をオープンさせなければならない。

 私は売場をチェックするため、今日も指示書を手に席を立った。

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