クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
オープン三十分前、売場は修羅場を迎えていた。
本日入荷の人気キャラクターとのコラボTシャツを真霜の指示のもと店頭に展開する予定だが、オープンに間に合うか微妙なところなのだ。
「とにかくお客様をお迎えできるように。段ボールはひとつにまとめて、トルソーと販促物は必ず終わらせて」
レジ開設を終えた私は売場を見て、瞬時に判断しそう指示を出す。
それから、片付けの手伝いに入った。空の段ボールや什器を、バックヤードに運んでゆく。
ばたばたと動きまわっていると、売場の雰囲気が急にぴりついた。
「オープンまで二十分。朝礼まで五分」
智田SVがやってきたのだ。店頭の売場をチェックしながら、彼は淡々と言う。
「間に合います」
私はそう言うと、真霜によろしくと目線で合図し彼のもとへと駆け寄った。
彼がこちらを向く。目が合った瞬間、昨日の彼の様子を思い出してしまった。
胸が強く跳ねたけれど、私は平静を装っていつものように挨拶する。
「おはようございます、智田SV」
「ああ、おはよう」
彼は思った通り、いつもの声でそう返してきた。昨日のあの顔が嘘のようだ。
だが、今日の彼はいつもと少し違った。