クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「この間お話した推しグッズの話なんですけど、こういうのがプレブロでもあったらいいなって――」

 またか、と智田は内心ため息をこぼした。彼女はよほど推しグッズの話が楽しいのか、毎回熱心に智田にプレゼンしてくるのだ。

(自分の業務に関係のない雑談をする暇があるのなら、店舗のことをしっかりと学んでもらいたいものだ)

 だが、智田はそう強くは言えなかった。春先のバーベキューの時に推し活グッズの話を振ったのは紛れもなく自分だ。
 それについ先日、本部のコンプライアンス研修を受けたばかりだ。こういう会話をバッサリと切る対応は良くないらしい。

 事実、本人に悪気はないとしても『パワハラだ』と言われてしまうご時世らしい。自分に愛想がないのも分かっているから、なおさらだ。

 普段ならパワハラだと言われたら真っ向勝負するところだが、今は違う。売場改変をやり切るまでは、どうにかそちらに尽力したい。
 そんな智田の思いはよそに、島崎は話し続ける。

「――それで、そういうのをリストアップしてみたんですよね」

 彼女はそう言うと、智田にスマホの画面を見せてきた。

「なるほどな」

 智田はそれを流し見ながら、早く会話よ終われと胸の内で願う。それでもまた細かくひとつひとつの説明をしだしそうな勢いの島田に、智田はつい口を開いた。

「そちらは俺が預かってもいいか? 島崎店長は店長として、やることが他にあるだろう」

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