クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 すると彼女は口を閉じ、目を見開いて智田を見上げる。それから複雑そうな顔を自分に向けてきた。

「そうですよね、すみません」

 素直なところは好感が持てる。パワハラと言われたらなんて、杞憂だったかとほっとした。

「そうだ、店舗運営といえば、不動店長は最近恋人ができたらしいですね」

 思いもよらぬ話題を振られ、胸がぞわりと嫌なふうに震えた。だが、平静を装うのは得意だ。

「そうなのか」

 ポーカーフェイスで彼女の話を受け流したが、彼女は続けて言った。

「仕事が順調な分、心配ですよね。ミスなんかしたら――」
「彼女は恋にかまけて仕事を疎かにするような人間じゃない」

 つい、反論してしまった。
 これは、そうであってほしいという自分の願望だ。恋人がいても、自分とは上司として変わらず接してほしいという、自分勝手な願いだ。

 はっとしたが、それを顔に出してはいけない。じっと島崎を見ていると、彼女は居心地悪そうに智田から顔を背けた。

「智田SVは、不動店長のこと信頼してるんですね。でも、分かります。不動店長って、プライベートになにがあろうとも仕事に持ち込まなさそうですもんね」

 そんな彼女の言葉に同意すると同時に、複雑な気持ちが胸を襲った。

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